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告白された。

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突然の出来事だった、とも取れるし

僕自身も内心「そうなるのではないか」といった、淡い予感(期待?)を抱えていたことも事実だ。


残業を終え、駐車場まで向かう途中で彼女と出会った。

母子家庭でパートタイマーとして働いている彼女と、まさかこんな時間に遭遇するとは。

それは僕にとっては予想外であり、彼女にとっては計画的だったのだろう。

「あれ、家ってこの近所だったっけ?」などと軽い世間話をしているうちに、何人かの同僚が我々の横を通り過ぎてゆく。

少しばかり視線が気になったが、彼女は臆せぬ様子だった。


話題も一巡し、軽い沈黙の後に彼女が上目遣いで切り出した。

「あの。ずっと言おうと思ってたんだけど・・・」

僕は口元の微笑を崩すことなく、「うん。どうしたの?」と促す。

少々わざとらしかったかも知れないが、動じずにいられたのは我ながらたいしたものだと感心した。


僕には妻子がいる。

しかも女房も(部署は違うものの)同じ職場で働いており、日に何度かの接点もある。

僕自身は「女房を心から愛している」とは言えないのかも知れない。

でも、娘たちを愛している。彼女の故郷での生活を愛してもいる。

そして何より、僕には女房をこれ以上不幸せな目に合わせる訳にはいかないのだ。


彼女の質問には短い単語で答えた。

「ありがとう。でも・・・その気持ちに応じることは出来ない」

きっと学生時代の自分ならこんな流暢に返答できなかっただろう。


彼女も僕の女房のことはもちろん知っていた。

ひょっとしたらその返事が聞けることを期待して、夜中にひとりで会社帰りの僕を待ち続けていたんじゃないだろうか。

「自分自身の気持ちに区切りをつけたくて」

彼女はそう言っていた。


あるいは僕も、彼女に何らかの好意を寄せていたのだろう。

でも、既に身動きが取れないことを知っていたし、すべてを失う覚悟なんてさらさらないことも自覚していた。

だから僕はこう答えた。「ごめんね」と。


帰宅後、女房には何も言わなかった。変わらない日常。余計な波風を立てるまでもない。


今日、明日と定休をもらっている。

次に彼女と会うのは月曜日だ。

笑顔で「おはようございます」と挨拶が交わせるといいのだけれど。



#タイトルが何故か文字化けする件。「告白された。」です。

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